2006-12-01 騒擾 詩 萩原朔太郎 重たい大きな翼《つばさ》をばたばたして ああなんといふ弱弱しい心臓の所有者だ 花瓦斯のやうな明るい月夜に 白くながれてゆく生物の群をみよ。 そのしづかな方角をみよ この生物のもつひとつの切なる感情をみよ 明るい花瓦斯のやうな月夜に ああなんといふ悲しげな いぢらしい蝶類の騒擾だ。 目次に戻る