2006-12-01 海鳥 詩 萩原朔太郎 ある夜ふけの遠い空に 洋燈のあかり白白ともれてくるやうにしる かなしくなりて家家の乾場をめぐり あるいは海岸にうろつき行き くらい夜浪のよびあげる響をきいてる。 しとしととふる雨にぬれて さびしい心臓は口をひらいた ああ かの海鳥はどこへ行つたか。 運命の暗い月夜を翔けさり 夜浪によごれた腐肉をついばみ泣きゐたりしが ああ遠く飛翔し去つてかへらず。 目次に戻る