2005-12-01から1ヶ月間の記事一覧

旅人の夜の歌…

FRAULEIN A.MUROHU GEWIDMET 降りすさむでゐるのは つめたい雨 私の手にした提灯《ちやうちん》はやうやく 昏《くら》く足もとをてらしてゐる 歩けば歩けば夜は限りなくとほい 私はなぜ歩いて行くのだらう 私はもう捨てたのに 私を包む寝床《ねどこ》も あつ…

或る晴れた日に

悲哀《ひあい》のなかに 私はたたずんで 眺めてゐる いくつもの風景が しづかに みづからをほろぼすのを すべてを蔽《おほ》ふ 大きな陽さしのなかに 私は黒い旗のやうに 過ぎて行く古いおもひにふるへながら 風や 光や 水たちが 陽気にきらめくのを とほく…