平原

起きると紙にむかふ
紙は真白《ましろ》な平原になり
平原はけふもどこまでも続く
いくら歩いても
行手《ゆくて》が見えて来ない
どんな旅行でも
これ以上永《なが》い旅はなからう
駱駝《らくだ》も
馬も
人さへ死にはてた平原に
吹きすさぶものは風ばかりだ
みんなばらばらに歩く
歩いてゐるとばたばたやられる
やられるものを振り返らない
見向きもしない
うつちやつて行く
真白《ましろ》な平原に月もない
何《な》にも見えない
さはるものは一つもない