2004-07-01 桜咲くところ 詩 室生犀星 私はときをり自らを懺悔《ざんげ》する 雪で輝いた山山を見れば 遠いところからくる 時間をいふものに永遠を感じる ひろびろとした眺《なが》めに対《むか》ふときも よき人の艶麗《えんれい》がにほうて来るのだ 艶麗なものに離れない 離れなければ一層苦しいのだ その意思の方向を先廻《さきまは》りすれば もういちめんに桜が咲き出し 春浅い山山に まだたくさんに雪が輝いてゐる