河原で汲み上げる物

我、石を拾い集める 時の泉で
我、石を積み重ねる 賽の河原で

失(う)せた流れに 置き去(ざ)られた思いを
一人たたずむ 先の無い河原で
音も無く崩れる 重ねあげた真理は
繰返された世界の 不条理な礎

生まれた日の喜びは 少年の日に忘れ
少年の日の夢は 青年の日に壊れ
青年の日の希望は 老年の日に崩れ
老年の日の救いは 死をもって消えゆく

我、石を拾い集める 時の泉で
我、石を積み重ねる 賽の河原で

静謐な時の泉 あかぎれた手を灯す
土台となるモノモノ 酷く突き刺さる
両手で抱き上げた 彼(か)の社会の幸せは
滴り落つ水達 我が価値無きガランドウ

一番上に載せようと思って
本当に小さな石を掴んでみれば
両手で支(さ)えなければ上がらない
生まれた日の喜びだった

そして私は、見てきたものを
山を、森を 捨てられた水源を
石と共に探りながら 並べていった
積み上げるのではなく

石でかこわれ 作り出された泉を
数えつくした私は
寂寥のうちに帰っていった

   (2004.8)
名取川の河原で、一人ビニールシートを広げてうつ伏せで寝転び、石の間から生える細長い草を数え上げながら