琥珀の思いに

眠れぬ夜の月の下
夜露《よつゆ》が香る草の上
琥珀《こはく》の中のかけた心が
誰にも触れず歩き出す

私の放したいたずらは
君の心を惑わせて
木の葉を揺らすため息に
手元の草を絡ませる

私はそっと手を添えて
幼さ残る瞳から
すべてをとかす微笑を
琥珀の中に閉じ込めた

祖国の森へと過ぎ去った
移ろう季節の冬化粧《ふゆげしょう》
山の麓《ふもと》の春告草《はるつげぐさ》に
君の名を寄せ花とした

この空の向こうに
君もいるのだろう
星を見つめているのだろう
かけた心を取り戻すまで

(2004.9)