2004-10-20 ココアのひと匙 詩 石川啄木 われは知る、テロリストの かなしき心を―― 言葉とおこなひを分ちがたき ただひとつの心を、 奪はれたる言葉のかはりに おこなひをもて語らんとする心を、 われとわがからだを敵に擲《な》げつくる心を―― しかして、そは真面目《まじめ》にして熱心なる人の常に有《も》つかなしみなり。 はてしなき議論の後の 冷めたるココアのひと匙《さじ》を啜《すす》りて、 そのうすにがき舌触《したざは》りに、 われは知る、テロリストの かなしき、かなしき心を。