手と手の平の冬木立

朝地下鉄でぐらりとゆれて
はっと手すりへ手を繋ぐ
手と手の平は荒れ果てていて
一足早い冬木立
物書き付けるその元に
手と手の平があったはず
心を通って腕へ手へ
万年筆のペン先へ
書き付けられたその先は
声も切れ切れ秋の蝉

早くも冬がやってきた
湯へと腰を入れてはみたが
吹きつく寒さに背を曲げた
季節はそのように
人に詩をうえつけてゆくものかもしれない
やがて風がたくさんの手と手の平を奪い去るだろう
それはそっと霜に当てられ砕かれるだろう
そして時雨で色ずくこの白壁よりも真っ白な雪が
街全体を城へと変えてゆくだろう
私の生まれし雪の日は、この荒れ果てた手と手の平を
真綿の思いで包んでくれるだろうか

    (2004.10.19-20)
 朝の地下鉄で自分の手と手の平をみて、ここの所の仕事の疲れを酷く感じる。次の日は休みを取り、白石市にある白石城を訪れたあと、駅前で温麺を食べ、バスで鎌先温泉に浸かりに行く。