山田温泉:北津軽郡鶴田町(2)

津軽に行くと友人に話したところ、黒石市ランプの宿を進められた。じつに心を揺り動かされるひなびた宿なのだが、電車とバスで移動の身分の私には、とても行けそうに無い秘湯であった。そこで次に目を付けたのは、大鰐温泉弘前から近く、電車の大鰐温泉駅からすぐの所の温泉とのことだったのだが、出発直前になって宿を探したために、私の給料で泊まれる宿がうまく見つからない。
あきらめて、出張先に近いところに泊まろうと、先方に電話で宿を訪ねたところ、山田温泉と呼ばれる宿を勧めらる。「青森県 山田温泉」とHPを探してみるが、温泉マニアによる紹介サイトが引っかかるだけで、宿のページが無い。宿泊料金で引っ掛けると素泊まり4515〜と生活に負担をかけない料金となっているので、早速宿に電話して予約を取った。やはりこの時代、更新を定期に行っているページでないにしろ、宿泊料金と場所と電話番号ぐらいは載せたHPが欲しいものである。
北津軽郡鶴田町(1)で話したが、宿に着くころには疲労で足は棒になり、寒さで顔はツララのようであった。急いで宿に入るとさっそく部屋に案内され、6畳位の畳の部屋へと通される。ここで予約時のポイントであるが、宿の部屋には内湯の付いている部屋と付いてない部屋がある。料金は変わらないが、内湯つきの部屋は部屋が古い旧館で、付いてない部屋は新館のようである。小奇麗であれば、古さのただよった畳の部屋の方が、私の気に入るほうなので、部屋の雰囲気は中々よいものであった。ただし、テレビはアンテナの調子が悪いのか映りが悪い。部屋の横にある内湯の説明を聞くと、なんと温泉の湯を引いた総ヒバ作りの内湯である。4515円で、温泉の内湯が付いている部屋なんてなかなかないぞと、はるばる津軽まで寒さに震えた幸せを祝う。
とりあえず、内湯はおいといて大浴場の方へと入りに出かける。ここの泉質は、ナトリウム・塩化物・炭酸水素塩泉(含重曹食塩泉)であり、重曹泉の湯はなかなか珍しい。大量掛け流しの風呂で(露天風呂はない、室内風呂のみ)、黄土色の湯が重曹のぬるぬるで、特有のコールタールの匂いがほのかに香っている。
この種類の風呂に入るのは、東鳴子の高友旅館の黒湯以来である。黒湯に入ると道路工事の舗装の現場に来たような、匂いがする。部屋中このコールタールの匂いが充満していて、これは効きそうだ思った。よって2泊逗留したが、風呂に入って寝て食べて、風呂に入って寝て食べてと、風呂がちょうど良い具合に疲れるので非常によく寝れたのを覚えている。
山田温泉の湯は同質であると思うが、そこまで濃厚な湯ではなく、部屋の匂いもうっすらとは感じられるものの強烈感はなく、ゆったりと入れる感じである。何回かに分けて、浸かったり休んだりを繰り返してたっぷりと湯を味わい、部屋へと戻るとすらと一眠りしてしまった。宿の部屋の内湯のほうにも、同じ湯が引かれているので、その後何度も入り、最終的には翌日の出立までに5回も風呂に入ったことになる。
翌日聞いた話では、内湯があるために宿の部屋は少し暖かく、冬場あまり暖房を強くしなくても過ごせるそうであるが、逆に夏は熱気が部屋のほうにきて、多少過ごしにくいと効いた(現地の人から)。まあ、エアコンがあったので問題は無いのだが。泊まるなら涼しい時期がいいだろう。宿は、内湯のある旧館の他に、内湯の無い新館もあるので、大浴場のみで良い人はそういう選択肢もある。なお、大浴場の営業時間は6:00〜22:00となっている。部屋の内湯はいつでも湯が出ているので、24時間入れる。
他に追記としては、近くに食事を食べるところがなく(歩きでは)、出前を取ったが味は微妙なところだった。出前を頼むよりは何か買っていったほうがいいだろう。一緒に泊まった関係者がいたのだが、到着が遅くなると聞いていたので飲むのは無理だろうと思って一人で飲まずにのんびり過ごしていたが、翌日会うと8時ぐらいに部屋に酒を持って行って見たがいなかったとの事だった。それは5回風呂に入った時間帯の一つであろう。おいしい秋田の地酒を飲む機会を逃してしまった、残念だ。その人とは、月末に北上で会うことになるので、おこがましくも再度の酒の持参をお願いしておいた。