下曲がりの木に

風の鳴る林

秋の切ない風に吹かれた
季節外れの虫達が
地面にへばりつくまいと
空に向かって飛び返す
チラチラ チラリ チラチラリ
そんな虫の群達が
一面に飛び跳ねる様に
目覚める物と追われる者の
命あるもののせめぎ合う姿を見た

葉の落ちきった木立の林
殺伐とした田畑のあぜ道
むぐらが自分を枯らして揺れる
傾斜沿いの下曲がりの樹木

私は記憶を落としていた
それは今年初めての
空に舞う雪達なのだ
いつまでも続く冬の来ない年に
山深きこの地を舞い
そんな事すら忘れていたのかと
賢治の暮らしたこの街で
そういう風にある不思議なもの達を忘れるなとの
キラキラ輝く妖精を見た

    (2004.12.11)
 花巻市鉛温泉へと向かうバスの中、青かった空が次第に曇り、山道で私にとっての初雪を降らした。