旅立ち

花巻鉛温泉

一人置かれた山の道
夕日に浮かぶ父の顔
落葉の海を辿《たど》りゆき
遠くの町を望みゆく

まつぼっくりを拾いゆき
右手で握り空に投《な》ぐ
ちぢんだこの実忘れない
夕暮れ雲に父の腕

枯葉を覆《おお》うホオの葉は
子供を隠す森の顔
遠い異国の人達に
踏まれて割れた父の指

揺れて揺られて日は沈み
空に旅立つ夜半《よわ》の月
いずれ迎えに来るはずと
そり立つ直木《すぎ》は父の足

   (2004.12.12)
 歌にあわせて詩を作ろうと、夕焼け小焼けのリズムで詠う。花巻の鉛温泉に入った後に考えてみた。