冬の王者

野生の王が雄叫《おたけ》びを掲げる

ウウオ・・・ン ウウオ・・・ン

白い 白い 真っ白な肌に
野獣の毛を張り立たせる
我は王なり この国の王なり
春を越え、夏を越え、秋を越え、我は目覚める
芽を伸ばし、枝をつくり
葉を青く変え、真っ赤に、黄色くさせ
そしてすべてを 大地に撒《ま》き散らした

まだか まだか まだなのか
我を目覚めさせる将軍はまだか
烈《はげ》しい雨が打ちつけた
我はまだ覚めない
冷たい風を吹き上げた
早くしろ 早く舞い上がれ
凍てつく雪が散り落ちた
ビリビリする 我はビリビリするぞ
空は闇《や》み、風は巻き、大地は吹き返す
白い 白い 空気までもが白い

我は 我はここに 目覚めを宣言する
真っ白な地肌の幹を揺らせ
枝を奮《ふる》わせ我は目覚めた
立ち上がれ 立ち上がれ裸馬達よ
街を灰に 白く白く 染め上げるのだ
前足で白き大地を叩きつけ
嘶《いなな》き、憤《いきどお》る 地吹雪《じぶぶき》が聞こえる
軟弱なものたちに明け渡した 大地を取り返すのだ
北から全軍を持って南へと下る
さあ 大地の太鼓をかき鳴らせ

ウウオ・・・ン ウウオ・・・ン

我は王なり この国の王なり

    (20004.12.21)
 旅先の北上市和賀仙人にて雪に見舞われる。連なる山々は、葉の落ちた落葉樹と雪で白い山肌が続く。直立する木々と白い肌に、馬の肌を近くで見たときの、毛と皮膚の肉感を感じた。