2005-03-22 月の光 その二 詩 中原中也 おゝチルシスとアマントが 庭に出て来て遊んでる ほんに今夜は春の宵《よひ》 なまあつたかい靄《もや》もある 月の光に照らされて 庭のベンチの上にゐる ギタアがそばにはあるけれど いつかう弾き出しさうもない 芝生のむかふは森でして とても黒々してゐます おゝチルシスとアマントが こそこそ話してゐる間 森の中では死んだ子が 蛍のやうに蹲《しやが》んでる 目次に戻る