2006-01-30 自分達の仕事 詩 山村暮鳥 自分達の仕事 それは一つの巣をつくるやうなものだ 此の空中にたかく どんな強風にも落ちないやうな巣をつくれ そして大地にふかぶかと根ざした木木 その木の梢のてつぺんで 卵を孵へさうとしてゐる鳥は いまああしてせはしく働いてゐる 毎日毎日 朝から夕まで あちらの都会の街上で女の髪毛《かみげ》を拾つたり こちらの村の百姓の藁を一本盗んだり ああ自分達もあの鳥とおなじだ けれど鳥にはあのやうな翼がある 自分達には何があるか ああ 目次に戻る