2006-01-30 消息 詩 山村暮鳥 はつなつの木木の梢をわたる風だ 穀物畠の畝からぬけでてきた風だ わたしらの屋根の上を それはまるで遠くできく海の音のやうだ その下にわたしらはすんでゐる 魚類のやうにむつまじくくらしてゐる 風はしめやかだ たかいあの青空をわたる風だから 時時すういと突刺すやうにつばめなんどを飛ばせてよこす そしてわたしらをびつくりさせる わたしらはむつまじくくらしてゐる わたしらは貧しく而《しか》もむつまじくくらしてゐる わたしらは魚類のやうにくらしてゐる 目次に戻る