2006-01-30 感謝 詩 山村暮鳥 なんといふはやいことだ たつたいまおきたばかりのところヘ ステーシヨンから箱が一つ どつさりととどいた その箱は遠くからいくつもいくつも隧道《とんねる》をくぐつてきたのだ 黄金《こがね》色した大きな穀物畠を横断し 威勢のいい急行列車に載せられてきたのだ そして此の都会のわたしらまできたのだ みると箱の裂目からなにかでてゐる それは葱の新芽だ それから馬鈴薯《じやがいも》と鞘豆と 紫蘇の葉の匂もそこら一ぱいに朝のよろこびを漂はせてゐる 目次に戻る