2006-01-30 労働者の詩 詩 山村暮鳥 ひさしぶりで雨がやんだ 雨あがりの空地にでて木を鋸《ひ》きながらうたひだした わかい木挽はいい声を張りあげてほれぼれとうたひだした 何といふいい声なんだ あたり一めんにひつそりと その声に何もかもききほれてゐるやうだ その声からだんだん世界は明るくなるやうだ みろ、そのま上に 起つたところの青空を 草木《くさき》の葉つぱにぴかぴか光る朝露を 一切のものを愛せよ どんなものでもうつくしい わかい木挽はいよいよ声をはりあげて そのいいこゑで 太陽を万物の上へよびいだした 目次に戻る