梢の巣にて(2)〜高原の風景より〜

gravity22006-04-21


梢の巣にて(1)から

樹の上の鳥の巣

私はそのまま、木々の背が高くなっていく先へと急ぎました。森は相変わらず、荒れた褐色の肌をさらして、飄々とたたずんでいます。
すると、あるところで、辺りの見晴らしがよくなり、遠くの山が見えるようになりました。山は雪を被っていて、それは頭だけでなく裾野までも広がっていて、そして青白く光っています。
私はそこで、山を背にしている木の幾つかに、鳥の巣があることに気がつきました。幾分遠くにあるので、それがはっきり鳥の巣であるかどうかを聞かれると、私は鳥に詳しくないので自信が持てないのですが、その巣は木の高い所の枝の付け根にあり、小枝で丸く組み上げられたものでした。
私はそこに、近づいてみようと思いましたが、その巣のある木と私と間にはやぶがあり、とても歩けそうにありません。それに、そういった鳥の巣には近づかないほうがいいと、聞いたことがあります。だから私はそのままで、その鳥の巣に持ち主の鳥が帰ってこないか、その鳥の巣から鳥の声が聞こえてこないかを、ずっと待っていました。
丘の上の木々は、山の方からうねりながらやってくる風に大きく揺らいでいました。ムカデのように這いながら、幾つかの丘を越えていくたびに自然と足音が揃えられ、ひしひしと大地をさらっていくようになるのです。もちろん、高原の木々も、そんなことは十分承知の上の事で、大地との境目にむき出された裸根はびくともしません。しかしそれでも木々は幹を、その太いところを支点として、風の吹き抜ける方へと絶えず傾いていきます。田んぼに風が吹くとき、稲穂がその風の通り道を示したりしますが、その林の木々は同じように両側に分かれて、風の通り道を示そうとしていました。
その時、そのひとつの風は私の頭の上に、細い枝を落としていきました。細い枝ですし、フリースの帽子を被っているので痛くはありませんでしたが、その枝は分岐点を2箇所もった、15cmぐらいの長いものでした。登ってくる時、私はそれらのもぎ取られた枝に気づきませんでしたが、周囲にはそのような枝がたくさん落ちていて、その内の幾本かには、唐松の松ぼっくりが付いたままの形で落ちています。

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