救済の綱

わづらはしき世の暗の路に、
ああ我れ、久遠《くをん》の恋もえなく、
狂ふにあまりに小さき身ゆゑ、
ただ『死』の海にか、とこしへなる
安慰よ、真珠《またま》と光らむとて、
渦巻《うづま》く黒潮《くろしほ》下《した》に見つつ、
飛《と》ばむの刹那《せつな》を、犇《ひし》と許《ばか》り、
我をば搦《から》めて巌《いは》に据《す》ゑし
ああその力《ちから》よ、信《しん》のみ手の
救済《すくひ》の綱《つな》とは、今ぞ知りぬ。

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