2004-07-01 はる 詩 室生犀星 おれがいつも詩を書いてゐると 永遠がやつて来て ひたひに何か知らなすつて行く 手をやつて見るけれど すこしのあとも残さない素早い奴だ おれはいつもそいつを見ようとして あせつては手を焼いてゐる 時がだんだん進んで行く おれの心にしみを遺《のこ》して おれのひたひを何時《いつ》もひりひりさせて行く けれどもおれは詩をやめない おれはやはり街から街をあるいたり 泥濘《でいねい》にはまつたりしてゐる