自分の生い立ち

僕はあるところに勤めてゐた
僕は百人の人人と
朝ごとの茶をのんだ
僕は色の白い少年であつた
みんな頬《ほほ》の紅《あか》い僕を愛した
僕は冬も夏も働きつづめた
そのころ僕は本を読んだ
僕の忍耐は爆発した
僕は勤めさきを飛び出した
父も母ももう死んでゐた
僕はほんとの父と母とを呪《のろ》うた
もう併《しか》しどこにもその人らはゐなかつた