2004-07-25から1日間の記事一覧
自分は何故《なにゆゑ》詩を書かずに居られないか いつも高い昂奮《かうふん》から 詩を思はずに居られないか 自分を救ひ 自分を慰め よい人間を一人でも味方にするためか 詩を書いてゐると 餓死《がし》しなければならない日本 この日本に 新しい仕事をする…
僕は気がつくと裸《はだか》で ひるま街を歩いてゐたのであつた こんなことはあるべき筈《はず》ではないと 手をやつて見ると何も着てゐない 何といふ恥かしいことだ 僕は何か着るものがないかと 往来《わうらい》を見まはしたけれど ボロ切《ぎ》れ一つ落ち…
僕はあるところに勤めてゐた 僕は百人の人人と 朝ごとの茶をのんだ 僕は色の白い少年であつた みんな頬《ほほ》の紅《あか》い僕を愛した 僕は冬も夏も働きつづめた そのころ僕は本を読んだ 僕の忍耐は爆発した 僕は勤めさきを飛び出した 父も母ももう死んで…
茫《ぼう》とした 広い磧《かはら》は赤くもみいで 夜《よ》ごとに荒い霜を思はせるやうになつた 私は幾年《いくねん》ぶりかで また故郷《こきやう》に帰り来て 父や母やと寝起きをともにしてゐた 休息は早やすつかり私をつつんでゐた 私は以前にもまして犀…
砂山に雨の消えゆく音 草もしんしん 海もしんしん こまやかなる夏のあもひも わが身《みな》うちにかすかなり 草にふるれば草はさあをに 雨にふるれば雨もまさをなり 砂山に埋め去るものは君が名か かひなく過ぐる夏のおもひか いそ草むらはうれひの巣 かも…
凍《し》みて痛めるごとく はてしなく こころ輝き 枯木《かれき》のうへにひびきを起す わが君とわかれて歩めば あらはるとなく 消ゆるとなく ふりつむ我が手の雪を ああ 君は掻《か》く