2005-02-24 爽やかな五月に 詩 立原道造 月の光のこぼれるやうに おまへの頬に 溢れた 涙の大きな粒が すぢを曳いたとて 私は どうして それをささへよう! おまへは 私を だまらせた…… 《星よ おまへはかがやかしい 《花よ おまへは美しかつた 《小鳥よ おまへは優しかつた ……私は語つた おまへの耳に 幾たびも だが たつた一度も 言ひはしなかつた 《私は おまへを 愛してゐる と 《おまへは 私を 愛してゐるか と はじめての薔薇が ひらくやうに 泣きやめた おまへの頬に 笑ひがうかんだとて 私の心を どこにおかう? 目次に戻る