消えると言うこと

僕が消えてなくなると言うこと

死に近い桜が、悲しい花びらを託す
ただよってもみよ
うらぶれてもみよと
華々しく散るなど、人には嘘だ

心の端、枝の切れ端より
地上へと帰り
ヒラビラと揺らめき
一つの花を、焼けこげた色へと帰す

消えると言うこと、帰ると言うこと

解けゆく花びらは、どこへ去るのか
華々しい息吹も
消えゆく明日から
一人の心を、どこへ返すのか

悲しみ
の集まりが、心を満たしても
古びた手足は
心を刺せない
うらぶれた日々は、どこへとゆくのか

消え去ると言うこと、有ると言うこと

作られた物は、いずれは消えると言うのだ
なぜ有りうるのか
だれが悲しみを始めたのか
崩れ逝く世界を、解き放つのは誰か

漂える気配に、この体流しても
切り取られた先の
爪先にはならない
軒下の果実に、はぐれた花びらが散る

ただよったもみよ、うらぶれてもみよと

 (2005.3)