2005-11-02 秋のうた 詩 島崎藤村 秋は来《き》ぬ 秋は来ぬ 一葉《ひとは》は花は露ありて 風の来て弾《ひ》く琴の音《ね》に 青き葡萄は紫の 自然の酒とかはりけり 秋は来ぬ 秋は来ぬ おくれさきだつ秋草《あきぐさ》も みな夕霜《ゆふじも》のおきどころ 笑ひの酒を悲みの 盃《さかづき》にこそつぐべけれ 秋は来ぬ 秋は来ぬ くさきも紅葉《もみぢ》するものを たれかは秋に酔はざらめ 智恵あり顔のさみしさに 君笛を吹けわれはうたはむ 目次に戻る