秋のうた

秋は来《き》ぬ
  秋は来ぬ
一葉《ひとは》は花は露ありて
風の来て弾《ひ》く琴の音《ね》に
青き葡萄は紫の
自然の酒とかはりけり

秋は来ぬ
  秋は来ぬ
おくれさきだつ秋草《あきぐさ》も
みな夕霜《ゆふじも》のおきどころ
笑ひの酒を悲みの
盃《さかづき》にこそつぐべけれ

秋は来ぬ
  秋は来ぬ
くさきも紅葉《もみぢ》するものを
たれかは秋に酔はざらめ
智恵あり顔のさみしさに
君笛を吹けわれはうたはむ

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