愛の路

高きに登り、眺むれば、
乾坤《けんこん》愛の路通ふ
青海原のはてにして、
安らかに行く白帆影。──
  波は休まず、撓《たゆ》まずに
  相噛《か》みくだけ、動けども、
  安らかに行く白帆影。

路のせまきに、せはしげに
蠢《うご》めく人よ、来て見よや、──
  花を虐《しひた》げ、景《けい》を埋《う》め、
  直《すぐ》なるみちをつくるとて、
  狭き小暗さ愁嘆《しうたん》の
  牢獄《ひとや》に落ちし子よ、見よや、──
大海みちはなくして、縦横《じうわう》の
みちこそ開け、愛の路。

(九月十四日) 

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