黄の小花

夕暮野路《のぢ》を辿りて、黄に咲ける
小花《をばな》を摘《つ》めば、涙はせきあへず。

ああ、ああこの身この花、小《ちい》さくも
いのちあり、また仰《あふ》ぐに光あり。
この野に咲ける、この世に捨《す》てられし、
運命《さだめ》よ、いづれ大慈悲《おほじひ》の
かくれて見えぬ恵みの業《わざ》ならぬ。

よし我、黄なる花の如、
霜にたをるる時あるも、
再び、もらす事なき天《あめ》の手《て》に
還《かへ》るをうべき幸もてり。

ああこの花の心を解《と》くあらば
我が心また解《と》きうべし。
心の花しひらきなば、
またひらくべし、見えざる園の門《かど》。

(八月二十二日) 

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