我が世界

世界の眠り、我ただひとり覚《さ》め、
立つや、草這《は》ふ夜暗《やあん》の丘《おか》の上。
息をひそめて横たふ大地《おほつち》は
わが命《めい》に行く車《くるま》にて、
星鏤《ちりば》めし夜天《やてん》の浩蕩《かうたう》は
わが被《かづ》きたる笠の如。

ああこの世界、或は朝風の
光とともに、再びもとの如、
我が司配《つかさどり》はなるる時あらむ。
されども人よ知れかし、我が胸の
思の世界、それこの世界なる
すべてを超ゑし不動《ふどう》の国なれば、
我悲しまず、また失《うしな》はず、
よしこの世界、再びもとの如、
蠢《うごめ》く人の世界となるとても。

(八月二十二日) 

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