波は消えつつ

波は消えつつ、砕けつつ
底なき海の底より湧き出でて、
朝より真昼《まひる》、昼《ひる》より夜に朝に
不断《ふだん》の叫びあげつつ、帯《をび》の如、
この島根《しまね》をば纒《まと》ふなり。

ああ詩人《うたびと》の興来《きようらい》の
波も、消えつつ、砕けつつ。
はかり知られぬ『秘密』の胸戸《むなど》より、
劫風《ごふふう》ともに千古の調にして、
不滅の教宣《の》りつつ、勇ましく
人の心の岸には寄するかな。

(九月十二日夜) 

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