2005-06-02から1日間の記事一覧

夏みかんの香おりは たえてひさしい わたしの「幸福」を 甦らせた わたくしは むさぼりかいだ 水色の世界をゆく ゆきくれたわたしのむねが 夏みかんのかおりをうれしむ しずかにうれしむのだ 上に戻る 傍点は太字で示した。 ルビは《》で示した。 底本:「定…

こころが 死のこころをゆくとき 四月のうすら赤い若芽にさえ その若芽のかたちにもゆる 死の満潮をみるとき 私の詩は 私のこころを掴んで 崇厳な飛躍をする 上に戻る

少女には むやみに語るものじゃない 私の言葉だけで 妹の心は見ぬ人をあこがれている 私もうっかり言ったつもりじゃなかったが そんな強い痕を残すとは あらかじめ どうして気付き得たであろう? 何も告げぬのもわるいようだし と 言って 一言でも言った そ…

けらけらとわらう声が あとからついて来る 春が 蛇がするするとゆく日 わたくしがゆくと そのうしろから だれだかしらない けらけらとわらう 上に戻る

もの足らぬ日であるゆえ 庭におりたって 金鎚で土をたたいた それでもまださびしいゆえ 堅い石をたたいてみた するときなくさいにおいが 白白《しらじら》とたちのぼってくる 上に戻る

土をたたく

一九二三年(大正一二年)四月編