2006-11-03から1日間の記事一覧

跋文

土 岐 哀 果 石川は遂に死んだ。それは明治四十五年四月十三日の午前九時三十分であつた。 その四五日前のことである。金がもう無い、歌集を出すやうにしてくれ、とのことであつた。で、すぐさま東雲堂に行つて、やつと話しがまとまつた。 うけとつた金を懐…

悲しき玩具

呼吸《いき》すれば、 胸《むね》の中《うち》にて鳴《な》る音《おと》あり。 凩《こがらし》よりもさびしきその音《おと》! 眼《め》閉《と》づれど、 心《こころ》にうかぶ何《なに》もなし。 さびしくも、また、眼《め》をあけるかな。 途中《とちう》…

悲しき玩具

目次 悲しき玩具 跋文