2004-07-19から1日間の記事一覧

それでも人は

もう さわらないで下さい 夕暮の下(もと) ほほえむあなたの息さえも 私には強く感じられるから 思うだけで閉ざされてしまうから すべてが孤独に見ゆる日 荒涼たる秋の枝のように 一重(ひとえ)の風に奮われて 最後の一葉(いちよう)をも失ってしまうから…

火を放ったのは

火を放ったのは誰だ 冬の空気に、枝が張りそめ 霜柱のきしみに細毛がふるえる 野は焼かれ、田には黒煙が立つ 黒影は、私は白痴(ばか)だとささやく街人に思えた そうだ、これは私の望んだものだ ふるわれた灰は、次の獲物を探す 枝を結んでいたクモが、もや…

日だるみの中

今日も今日とて溶けてゆく 日だるみの中 目をもたげる 刺し込むのは 週末のくびき 私は何を仰ぐのだろうか 舞い散る砂の粒、けだし 波に降りてゆく 地表は溶け合い、沼を汚す 動かねばならぬ腕の先 この手はよりよく重力をとらえる 人の子が進むにつれて負わ…

雪のあとの空を思ふ

まだ その島は見えない 雪を振りおえた雲は切れ間に、白い空を見せる 薄光に照らされた林は、幹で雪をふるい落とし 結晶でおおわれた葉は、海よりも深い青色に染まった手をこすり合わせている 移ろいゆく空の中で、消炭色(けしずみいろ)の雲が枝にひっかか…

ハゲタカの心もて

食物連鎖 過酷な生存競争が行われている 強きものが弱きものを喰らい 弱き者が滅べれば強き者も死に絶える運命 草食動物もわずかな水を求めて互いに傷つけあう 生きてゆくとは 過酷な生存競争なり より高く山脈の峰へ より高き大空へ 高みを目指す者あらば …

回転する願い

一つの光に 多くの願いがかけられている 若者が異国の空に 見出せなかった物 高原の少女が 窓辺に夢見た思い 群れから離れた鳥が 追い求めるくもの高み 都会の明るさよりも 大地の静寂さだが 霊峰の上の聖なる光も 果たされない願いは多すぎて 一つの光に一…

就労旅情

草が萌え 森が浮き 山が立ち上がる 雲は流れていった 風が運んでいった たべものだけでは 生きてゆけない世の中 みんな流れていった 何するでもなく 生まれた地を去り 電車を乗り継ぎ 赤茶けた街を いったりきたりして 灰色の者達の洗礼を浴びた この場所に…

ただ それだけ

現世に生けるもの 重きを背負うラクダとなりて 荒漠たるこの大地を 唯ひたむきに歩みゆく 痛みを負うものは 人の苦しみを知り 苦しみをもつものは 人をさげすみゆく 不安を抱くものは 人の悲しみを知り 悲しみに生きるものは 人をかすねてゆく この世にいけ…