2006-11-01から1日間の記事一覧

秋風のこころよさに

ふるさとの空《そら》遠《とほ》みかも 高《たか》き屋《や》にひとりのぼりて 愁《うれ》ひて下《くだ》る 皎《かう》として玉《たま》をあざむく少人《せうじん》も 秋《あき》来《く》といふに 物《もの》を思《おも》へり かなしきは 秋風《あきかぜ》ぞ…

一 病《やまひ》のごと 思郷《しきやう》のこころ湧《わ》く日《ひ》なり 目《め》にあをぞらの煙《けむり》かなしも 己《おの》が名《な》をほのかに呼《よ》びて 涙《なみだ》せし 十四《じふし》の春《はる》にかへる術《すべ》なし 青空《あをぞら》に消…

我を愛する歌

東海《とうかい》の小島《こじま》の磯《いそ》の白砂《しらすな》に われ泣《な》きぬれて 蟹《かに》とたはむる 頬《ほ》につたふ なみだのごはず 一握《いちあく》の砂《すな》を示《しめ》しし人《ひと》を忘《わす》れず 大海《だいかい》にむかひて一…

序文*2

函館なる郁雨宮崎大四郎君 同国の友文学士花明金田一京助君 この集を両君に捧ぐ。予はすでに予のすべてを両君の前に示しつくしたるものの如し。従つて両君はここに歌はれたる歌の一一につきて最も多く知るの人なるを信ずればなり。 また一本をとりて亡児真一…

序文*1

世の中には途方も無い仁《じん》もあるものぢや、歌集の序を書けとある、人もあらうに此の俺に新派の歌集の序を書けとぢや。ああでも無い、かうでも無い、とひねつた末が此んなことに立至るのぢやらう。此の途方も無い処が即ち新の新たる極意かも知れん。 定…

一握の砂(1)

目次*1 序文 序文 我を愛する歌 煙 秋風のこころよさに *1:字数の関係から2つに分けた