2005-11-07 千曲川旅情の歌 詩 島崎藤村 昨日またかくてありけり 今日もまたかくてありなむ この命なにを齷齪《あくせく》 明日をのみ思ひわづらふ いくたびか栄枯《えいこ》の夢の 消え残る谷に下りて 河波のいざよふ見れば 砂まじり水巻き帰る 嗚呼古城なにをか語り 岸の波なにをか答ふ 過《いに》し世を静かに思へ 百年《もゝとせ》もきのふのごとし 千曲川柳霞みて 春浅く水流れたり たゞひとり岩をめぐりて この岸に愁《うれひ》を繋《つな》ぐ 目次に戻る