2006-07-02から1日間の記事一覧

故田中恭吉氏の芸術に就いて

雑誌「月映」を通じて、私が恭吉氏の芸術を始めて知ったのは、今から二年ほど以前のことである。当時、私があのすばらしい芸術に接して、どんなに驚異と嘆美の瞳をみはったかと言うことは、殊更に言うまでもないことであろう。実に私は自分の求めている心境…

挿画附言

萩原君の詩はおおよそ独特なものだ。その独特さに共通した心緒を持つ故田中恭吉がその挿画を完成しないで逝いたのは遺憾なことだ。ただその画稿が残っていたことがせめてもの幸いでした。彼の最後の手紙に 「私はとうてい筆をとれない私の熱四十度を今二三度…

挿画附言

朔太郎兄 私の肉体の分解が遠くないという予覚が私の手を着実に働かせてくれました。兄の詩集の上梓《じょうし》されるころ私の影がどこにあるかと思うさえ微笑されるのです。 私はまず思っただけの仕事を仕上げました。この一年は貴重な付加でした。 いろん…

詩集附録

健康の都市

君が詩集の終わりに 大正2年の春もおしまいのころ、私は未知の友から一通の手紙をもらった。私が当時雑誌ザムボアに出した小景異情という小曲風な詩について、今の詩壇では見ることのできない純な真実なものである。これから君はこの道を行かれるように祈る…

月に吠える(2)

目次*1 跋 健康の都市 詩集附録 挿画附言 挿画附言 故田中恭吉氏の芸術に就いて *1:字数の関係から2つに分け、跋文から(2)に分けた。