感人

浮雲

小さきモノの震え 霜の檻をつくる さめた冬空に 一つの窓 ある者は足が動かず ある者は目が見えない 霧の先では浮かぶ 常世の鱗雲 目の見えぬ農夫 霜枯れた畑 はかなきブドウの種を いま一つ蒔く その上を…… 声の出せぬスズメ 種を拾った 固まる土へ 口を入…

たたみの 部屋は 青く 私を しめらす 長らく 狭い 部屋で 一人 夜 本を 読んだ 風が 止み 音が 一つ 消えた 月の ない 晩だ 一人 夜 本を 読んだ 部屋を 照らす 明かり 裸電球が 赤く 人の 死が 見えた 一人 夜 本を 読んだ 息を 深く 吐くと 紙は 赤く 燃え…

風光

心からませる 友までの叫び 白くたたずみし 山上こそ鋭く 震えだす起源よ 鱗雲たなびき この心響かす 悲しみこそ統《す》べよ (2005.5)

地球

君は病める事が出来ない その足で立って その腰で支えて そして太陽を 手で持っている この地球で夢を見ている だけど僕に 空が見えない ひろがった時が見えない この足で立って この腰で支えて そして太陽を 手で持っている だけど空が見えない 青い空が見…

とどめるもの

一人の人間 森の中 片端*1の樹木 街の中 何処に行く 何処に行く 一人の人間 何処に行く 腕を広げて逆らうものなく 枝を広げて逆らうものなく (2005.4-5) 昭和記念公園にて *1:体の一部の機能や形態に欠陥があること(大辞林)

「ふっ」としたこと

都会はいつも キリキリしている 僕の前の人はいつもイライラしている 僕の左の上司はいつもガミガミしている 朝 電車のレールは 毎日叫んで 電信柱は やめろよ! と 引っ張り合っている 誰かが 始めたのかな 少し 変えてみないか そうだ! こんなのどうだろ…

森の違い

森の違いを考えてみる。仮に、東北と東京の森の上に雪が降ったとしよう。 この東京の、春から夏、秋へと暖かい日差しを受けている森、人里の近くにあり人に温かみを与えている森。この森に灰色の少し明るい空から雪の粒が舞い降りる。雪は、杉やヒノキの葉の…

えんとつ

ゆめの かすむ そらに ぶどう ぐもは うかぶ いま 世界は 一粒の房 ふるう なみの おとに あさひ てりて かえり はまに うまる えだも ほおに うたを はこぶ さめた ときの なかに あさの ぶどう ジュース かれた むねに みちる せんの しろき ノート はいを…

一つの風景

乾く空の虚ろさ 破けた服の糸くず そのような白い筋 厚化粧まとわる 連なったハゲ頭 押し上げる車輪の足音 鉄橋に留まる日々 富士心白き山 シワガレタ遠き群青 流れ蛇行す荒川の 荒川遠く鏡届かぬ もはや消え逝く山の頂 明日の日から 昨日の日から 遥か遠く …

無題

レールのきしみに 心安《やす》げば 人で無くいられるだろうか 書類の海に 心潤《うる》えば 人に無くいられるだろうか ビルの高さに 心満《み》つれば 人が無くいられるだろうか 責める声に 心奮《ふる》えば 人と無くいられるだろうか 人で無ければ 人が無…

ひと針

ひと足 ひと針 沈まぬように 世を渡る アメンボがゆく アメンボがゆく 日比谷の街を (2005.5.14)

違い

違い 嬉しい時 私の土手に花が咲く クローバーに花が咲く 土手に寝そべる者 私一人 タンポポの綿毛 小さなピンクの野原 花を舞う虫達 私の上で 草の妖精であり 野原にて笑う 人と 違う 時 (2005.5.15)

虚ろ

この虚ろを束ね 一つに突き刺す力であれば 飛び込むこともできるであろうに

山の心

白い波 静かに溶ける 綺羅の波 はるかと続く 青い空 大地の時へ 人は旅する 吹き上げるのは 硫黄の煙 ひび割れるのは 氷の巌 再会の 言葉《ことのは》眠る 森の夢 月日を止めた 青い空 友の手握り 岩と繋げば 生まれし時を この日にとどめ 山の心 空に波打つ…

山について

見えないね ああ、見えない 君の家からはどうだい 私の家からは見えないわ 僕の家からも見えないんだ こっちのほうにあると思うんだけど そうね。海のほうは見えないとしても 陸のほうも見えないのね ここはどこもひらっぺただわ (2005.4) 東京はひらっぺ…

カモの国

池の水 ブクブクと すらりと伸びる嘴(くちばし) 曲がる首 水面(みなも)にはさむ 幸せなのか 君達は 池としては広い ここは 葦が茂っている 冬も終わると言うに ススキは秋の様だ 君達は歩きたくとも 辿り着けない 城の様に囲まれ 高い建物で囲まれ 夜も…

街頭

ティッシュ 配る その手 白き 肌に 腕を 伸ばす 悲しき心 我 思う ビラを 配る その手 枯れた 声を 風と 過ぎる 醜き心 我 思う 羽を 配る その手 子等の 求め 空に 過ぎる 擦れた心 我 思う 花を 見つめ この日 そっと 花に 添えた 花びらに なりたい (200…

僕の手が 笑っているのさ 手から骨が出て 笑っているのさ 机を叩く心 ひっきり無し (2005.4.13) 何のための物なのかわからない。

都会でさみしさ

都市で 人に 出会う そして すれ違う 田畑で 花に 出会う そして 過ぎて行く 都市で 月を 見上げる そして 目を凝らす 田畑で 星を 見上げる そして 目をつむる この世界に起こる いくつもの出来事 この私に起こる 一粒の感動 どうかこの時を 忘れないでいて…

誰にも出会えない この僕の見つめる 星を取らないで (2005.4.11) 星を見上げ、友を思う

心が寂しいから

心が寂しいから 穴を掘ってみた 心が寂しいから 岩を穿ってみた しかし何も 埋まらなかった (2005.4.10)

行列

長い 列 長い 列 何を 待つ 長い 列 死ににでも 行くのか (2005.4.8)

街に一人

私は一人だ 君も一人かい 心に雪が降り積むほどだ 青い雪が 君も一人で 僕も一人なら 共に歩いてゆけよう 蒼壁の街を (2005.4.4) 街に一人降り立つ。過去の自分と向き合う。

編集後記

この度、仕事の関係により仙台から埼玉へと引っ越すこととなり、東北を離れることとなった。私は主として詩を、地域の風土から得た物により創作しているため、大きく拠点が変わる今回を一つの区切りとすることとした。 そのなかでもここに掲載の詩は、2004年…

 ケヤキ並木

心 ふるえ ケヤキ並木 さらば この日 今生の別れ 街に 沿うて ケヤキ並木 人の ために 杜に宿る 朝日 浴びて ケヤキ並木 街に 光り 道を照らす 大地 残す ケヤキ並木 枠に はまり 幹はふるえ 裸根 反らす ケヤキ並木 狭き 杜は 地下に根ざす 枝を 広げ ケヤ…

人の弱さ

海の深さ 山は悲し 山の孤独 雲は悲し 雲の別れ 空は悲し 空の高さ 街は悲し 街の黒さ 雪は悲し 雪の刹那 星は悲し 星の廻り 森は悲し 森の乾き 石は悲し 石の尖り 川は悲し 川の濁り 人は悲し 人の弱さ 海は悲し (2005.2.10) 人だけが、自然でないのだ。 …

青森

我は見た 重き海の群青 深く蒼き山脈 絶白の頂 尊い青き空へと 《たっとい》 その 青き国は 鳥に 翼 海は 波 森に 裸身 山は 崖 人へ 道 求める (2005.1-2) 下北半島を遠くから見据える

冬道程

真っ白な雪ンコ 真っ白な雪ンコ にじんだインク 真っ白な雪ンコ 真っ白な雪ンコ 居座ったススキ 降り積もる綿雪 降り積もる綿雪 降り積もる綿雪 居座ったススキ くだされた冬空 くだされた冬空 くだされた冬空 突き刺さる鉄塔 突き刺さる鉄塔 吹き荒ぶ地吹雪…

ひょうけつ

うみの うえの くもは ひろく そらに わたり おやは こども つれて あおの なかに すわる かぜは とけて とまり ときの なかに おちて よせて かえす なみも ひろく みれば おなじ ひとは ひとを あいし やがて ひとを やどす ひとは いえに そだち いずれ …

幸《さいわい》を探しませう

幸《さいわい》を探しませう どこまでも行きませう 粉雪通る街の奥 震える柱の釘のもと 白さのにじむ待合所《まちあいじょ》 書き留められた落書きに 『山のあなたの空遠く 「幸《さいわい》」住むと人のいう』 ひときわ輝く書付《かきつけ》が 細かい字体で…