2004-07-01から1ヶ月間の記事一覧

それでも人は

もう さわらないで下さい 夕暮の下(もと) ほほえむあなたの息さえも 私には強く感じられるから 思うだけで閉ざされてしまうから すべてが孤独に見ゆる日 荒涼たる秋の枝のように 一重(ひとえ)の風に奮われて 最後の一葉(いちよう)をも失ってしまうから…

火を放ったのは

火を放ったのは誰だ 冬の空気に、枝が張りそめ 霜柱のきしみに細毛がふるえる 野は焼かれ、田には黒煙が立つ 黒影は、私は白痴(ばか)だとささやく街人に思えた そうだ、これは私の望んだものだ ふるわれた灰は、次の獲物を探す 枝を結んでいたクモが、もや…

日だるみの中

今日も今日とて溶けてゆく 日だるみの中 目をもたげる 刺し込むのは 週末のくびき 私は何を仰ぐのだろうか 舞い散る砂の粒、けだし 波に降りてゆく 地表は溶け合い、沼を汚す 動かねばならぬ腕の先 この手はよりよく重力をとらえる 人の子が進むにつれて負わ…

雪のあとの空を思ふ

まだ その島は見えない 雪を振りおえた雲は切れ間に、白い空を見せる 薄光に照らされた林は、幹で雪をふるい落とし 結晶でおおわれた葉は、海よりも深い青色に染まった手をこすり合わせている 移ろいゆく空の中で、消炭色(けしずみいろ)の雲が枝にひっかか…

ハゲタカの心もて

食物連鎖 過酷な生存競争が行われている 強きものが弱きものを喰らい 弱き者が滅べれば強き者も死に絶える運命 草食動物もわずかな水を求めて互いに傷つけあう 生きてゆくとは 過酷な生存競争なり より高く山脈の峰へ より高き大空へ 高みを目指す者あらば …

回転する願い

一つの光に 多くの願いがかけられている 若者が異国の空に 見出せなかった物 高原の少女が 窓辺に夢見た思い 群れから離れた鳥が 追い求めるくもの高み 都会の明るさよりも 大地の静寂さだが 霊峰の上の聖なる光も 果たされない願いは多すぎて 一つの光に一…

就労旅情

草が萌え 森が浮き 山が立ち上がる 雲は流れていった 風が運んでいった たべものだけでは 生きてゆけない世の中 みんな流れていった 何するでもなく 生まれた地を去り 電車を乗り継ぎ 赤茶けた街を いったりきたりして 灰色の者達の洗礼を浴びた この場所に…

ただ それだけ

現世に生けるもの 重きを背負うラクダとなりて 荒漠たるこの大地を 唯ひたむきに歩みゆく 痛みを負うものは 人の苦しみを知り 苦しみをもつものは 人をさげすみゆく 不安を抱くものは 人の悲しみを知り 悲しみに生きるものは 人をかすねてゆく この世にいけ…

冬の詩

一 冬だ、冬だ、何処もかも冬だ 見わたすかぎり冬だ 再び僕に会ひに来た硬骨な冬 冬よ、冬よ 躍れ、叫べ、僕の手を握れ 大きな公孫樹の木を丸坊主にした冬 きらきらと星の頭を削り出した冬 秩父、箱根、それよりもでかい富士の山を張り飛ばして来た冬 そして…

こころ

こころをばなににたとへん こころはあぢさゐの花 ももいろに咲く日はあれど うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて。 こころはまた夕闇(ゆふやみ)の園生(そのふ)のふきあげ 音(おと)なき音(おと)のあゆむひびきに こころはひとつによりて悲しめど…

郵便局の窓口で

郵便局の窓口で 僕は故郷(こきやう)への手紙をかいた。 鴉(からす)のやうに零落(れいらく)して 靴も運命もすり切れちやつた 煤煙(ばいえん)は空に曇って けふもまだ職業は見つからない。 父上よ 何が人生について残つて居るのか。 僕はかなしい虚無…

海豹

わたしは遠い田舎の方から 海豹《あざらし》のやうに来たものです。 わたしの国では麦が実り 田畑がいちめんにつながつてゐる。 どこをほつつき歩いたところで 猫の子いつぴき居るのでない ひようひようといふ風にふかれて 野山で口笛を吹いている私だ。 な…

プロフィール

仙台在住。東北中を旅して、詩や小説の創作活動を行っています。定禅寺通りの絵本の読める喫茶店★Mikke★に出没中。 出身:福島県 在住:仙台 職業:事務職 専攻:物理学 探求:歴史、哲学、思想、宗教 趣味:登山、旅行、ピアノ 祖父の住む福島県で生まれ、…

砂浜にて

波の音 空の光 風の声 ぬれたTシャツをかわかす はだかの少女 波と共に飛び跳ね 打ち上げられた海藻を 空に手渡す 暑い この青い空の下 無垢な 真砂の浜が広がる まだ 見えない 生活の息吹が やがて時が来て 海の家の声が聞こえるだろう 波の音 空の光 風の…

異なる広さで

東京 周りの生き物は動いている 激しく 通り過ぎていく 異界からの侵入者を避けるように 動かぬ物は 意志をもたない無機物 壁は熱い 森は何処だ 大地は踏まれている アスファルトに この街の中で 私はゆっくり呼吸をする唯一の者だ 誰も 気づく者はいない 山…

スロー

昼休みに ふと 目を大きく開けて 周りのデスクを見回してみる 新聞を読む人 インターネットをする人 NHKを見る人 自分の周りの時が ゆっくり流れている 空に 雲が流れる ケヤキが ゆれている 時間という物を区切り 行動を規定していくのではなく 周りの空…

世界の広さ

プラトン 世界の形相としてのイデアを、芸術として形作る。それは世界の形 トマス 神の真理と哲学の真理、世界は哲学にとって狭いが、啓示として世界の真理が得られる。 特別な聖職者が真理を得る。 カント 私達のは物自体を認識することは出来ない。感性と…

要求

私が唯、それが世界の姿であると、存在を保証できるものがわかればよい。 考える私、その私にたいして、世界はこう存在しているとする解釈を、実存として満たされることを欲する。 私には、それは式ではなかった。 考えるゆえに存在する。 存在定義を与えら…

問題

私は生活していく上で、恵まれていたと思う。 金銭的には社会の下層を歩いていたとしても、肉体的に劣っている私は、何らかの形で 周りの人間に助けられ生活をしてくることが出来た。 今もまた、周りの人間と集団として生きることによって、かろうじて仕事を…

ユウエイ

どうして それが、私を捉えた 黒板に削られるチョークの音 整列された人形の影 冬の雪山のように 夜中の月のように 壊れていない線が 明らかになる 世界は壊れている 削り取ることによって町が作られる 青空を削り、大地を削り 自然を削り、環境をつくる 一…

ウミ

新月の夜に、塀に反る。 人となることを欲しない 材木のように 拒否する。 世界のキーを求める ・・・救済 存在なき世界に 唯、死をアポケーしているだけ 闇を、孤独を ほかにスガルモノモが無いんだ (2003/12/24 (Wed))

ザイン

なぜ社会で生きることにより満たされないのか 問われれば、下のように答える 私には、世界を求める手段が足りないからだと なぜ社会で暮らすことにより満たされないのか 問われれば、下のように答える 私には、世界を捕らえる手段が足りないからだと 我々は…

持つ者が 豊かさのうちに過ごすだけが 旅ではない 何も無き者にも 世界は姿をさらす 人は社会の中で 生まれも育ちも平等ではない しかし 自然はすべてのものに旅を許す (2003/11/19 (Wed))

終末の空

少しずつ移り行く景色を、人もまばらな車内から眺めていると 次第に空は暮れていき、終わりが近づいてきた。 この果て無き旅路は、空(くう)へと向かい 死をイメージさせる紫色の光に、吸い込まれていけばよいのに (2003/10/28 (Tue))

束縛

世界に腺を引く 人は進むことが出来る 全てが自由の中では、すべてが対称であり 何もすることが出来ない 束縛こそが境界を引き 人に行動を与えているのか 存在すらも束縛から起因する物か (2003/07/10 (Thu))

粘性を持ったものが 手を引く 髪引く 足を引く 樹液のようなたれかたで 手に 足に 髪に 私は粘性に捕らえられる 世界の粘性に 境界を失うものに (2003/06/02 (Mon))

地下鉄のホームで

あれは良くないよ 帰宅する時のあの光は 不自然な明かりで照らされた中に ふと、新しい光が2つ近づいて来る 僕はその度に、なにか吸い込まれるような 目から近づいていくような いつも不思議なんだよ 君は感じないのかい (2003/05/11 (Sun))

重なる夜道

うぉ〜〜ん うぉおお〜〜ん 私の帰る故郷は、山辺の向こうにあるという 柳の陰を歩むれば いとしめやかに降り注ぐ 霞める頬の はかなさよ 重なる葉音 刻みゆく 私の影を切り裂きながら うぉ〜ん うぉ〜ん うぉおお〜〜ん 止まる事を知りながら 爪先立ちで 走…

停滞

花を見つめるように 社会に止まるのか 風の声を聞くように 街の中でたたずむのか 世界は美しい それゆえに醜い (2003/05/07 (Wed))

イカロス

飛ぶことなど望まない 空さえ見上げることが出来ないのだから 浅黒く 大地は望み 天を秤にかける 全ては地に沈み 高らかに謳うものなどいない 皮を裂け 翼の生まれを より深きものへの飛翔を為せ (2003/05/06 (Tue))